今回は、重量鉄骨造のビルで雨漏りが発生しているとのご相談をいただき、
現場調査に伺いました。

お話を伺うと、かなり前から雨漏りに悩まされていたとのことで、
雨が降るたびに本当にご不安な日々を過ごされていたことが伝わってきました。

【室内の状況確認】雨水を受けるための工夫がされていました

室内を確認させていただくと、
雨漏りの際に雨水を受ける桶（おけ）を置くための棚が設置されていました。

長い間、試行錯誤しながら雨漏りと向き合ってこられた様子がうかがえ、
「さぞ大変な思いをされてきたのだろうな…」と胸が痛くなりました。

こうした応急処置は、雨水被害を一時的に抑えることはできますが、
根本的な解決には至らないため、早めの原因特定が重要です。

【重量鉄骨造の雨漏り】原因特定が難しい理由

重量鉄骨造の建物は、木造住宅と比べて雨漏りの原因特定が難しいという特徴があります。

その理由の一つが、雨漏りしている場所の真上に、必ずしも原因があるとは限らないという点です。

鉄骨造の場合、

• 柱や梁（はり）を伝って水が移動する

• 外壁内部や鉄骨をつたって、別の場所に水が出てくる

といったことがよくあります。

そのため、「ここから漏れている＝ここが原因」と単純には判断できず、
建物全体の構造を理解した上で、慎重な調査が必要になります。

屋上に上がってまず目に入ったのが、排水口の詰まりです。

写真の通り、排水口は

• 土や砂

• ゴミ

などで、ほぼ塞がれている状態でした。

築年数の古い建物では、排水口が鉄製で作られていることも多く、
鉄は経年劣化で錆びやすいため、さらに詰まりやすくなってしまいます。

排水口が詰まると、屋上に水が溜まりやすくなり、本来とは違う方向から雨水が入り込んで、予期せぬ場所で雨漏りが起こることもあります。

また、雨漏りが発生している箇所が1か所だけではなく、複数あることが分かりました。

そのため、原因も1つではなく、複数の要因が重なっている可能性が高いと考えられます。

【室内の真上を確認】水が溜まりやすい屋上の状況

室内で棚を設置して雨水を受けていた箇所の、真上にあたる屋上部分を確認したところ、写真のような状況でした。

屋上表面には

• シミ

• 水が流れた跡

が見られ、雨水が溜まりやすい状態になっていることが分かります。

このような状態が続くと、防水層への負担が大きくなり、
この周辺の防水不良も雨漏りの原因として疑わしい箇所です。

【築年数と防水履歴】防水性能が低下している可能性

建物は、築約40年ほどと推測されます。

お話を伺うと、防水工事は

• 新築時

• その後に1回

のみとのことでした。

防水工事には耐用年数があり、年数が経つにつれて防水性能は徐々に低下していきます。

そのため、現在の防水層は、本来の性能を十分に発揮できていない状態と考えられます。

屋上全体を確認していくと、
写真のようにシート防水に亀裂が入り、何か所も破れている状態が見受けられました。

シート防水とは、屋上に防水シートを敷き詰めて雨水の侵入を防ぐ工法です。

しかし、このように破れが発生してしまうと、雨が降った際に破れた部分からシートの下へ雨水が流れ込むことは容易に想定できます。

この劣化も、今回の雨漏りの大きな要因の一つと考えられます。